WordPress 7では、管理画面の「設定 → コネクタ」から、ClaudeやChatGPT、GeminiといったAIサービスへの接続をまとめて登録できるようになりました。この画面を初めて見ると、多くの方がこう期待すると思います。「鍵を挿すだけで、AIが自分のサイトを丸ごと作り替えたり、新しい機能を足したりしてくれるのでは」と。
今回は、この期待がどこまで本当で、どこからが現実の壁なのかを、公開されている情報と海外の実地レビューをもとに確かめました。

結論:夢は「半分」本物
コネクタをつなぐと、AIは確かに動きます。ただし、手に入るのは「サイトを操作・構築してくれるAI」ではなく、「記事を書く人の横で提案してくれるAI」です。ブロックエディター(WordPressの標準の編集画面)の中で、文章づくりを助けてくれるアシスタント、というのが実像でした。ここが、期待と現実のいちばん大きな違いです。
つないで具体的にできること
公式の「AI」プラグインと各社の接続プラグインを入れると、編集画面で次のことができるようになります。海外でいち早く全機能を試したレビューでは、評価は機能ごとにはっきり分かれていました。
- タイトル案の生成 — 本文に沿った案を複数提示。汎用的な当たり障りのない案ではなく、内容に即していたと評価されています。
- 抜粋・要約の自動生成 — 長い記事から要点をまとめてくれる。「白紙から書き始める負担」が消える、という声がありました。
- 画像の代替テキスト(alt)の自動生成 — アクセシビリティ対応の地味な手間を肩代わりしてくれる。メディアライブラリで一括処理も可能。
- アイキャッチ画像の生成 — 動きはするものの「基本的」で生成も遅く、専門の画像生成ツールには及ばない、という辛口の評価。
- タグ・カテゴリーの提案、文章の言い換え・改善提案、コメントの迷惑判定 — いずれも補助的な機能として利用できます。
一方で、目玉と目されていた「AIによる原稿レビュー」機能は、海外のテストでは何も出力されず、実質的に機能しませんでした。多くの機能が「実験的」の位置づけで、出力はあくまで人が確認・修正することが前提です。
どこからが「できないこと」か
期待との差が出るのは、次のような点です。
- 「サイトを作り替えて」はできない。 コネクタ経由でできるのは、編集画面の各項目を手伝ってもらうことだけ。デザインの変更やレイアウトの改修、新機能の追加をAIに指示する窓口ではありません。
- クラシックエディターでは使えない。 標準のブロックエディターが必須です。
- 細かな業務フローには対応しない。 汎用的な作りのため、独自の込み入った要望は吸収してくれません。
つまり「管理画面からAIにサイト構築を丸投げする」という夢の部分は、このコネクタの担当範囲の外にあります。それは別の仕組み(サイトの機能をAIに開放するAbilities APIや、権限を絞って外部AIから操作するMCPアダプター)が引き受ける領域で、私たちが並行して検証しているテーマです。
見落としがちな「お金」と「鍵」の話
導入前に必ず知っておきたい落とし穴もありました。
WordPress本体には、AI利用の上限(使いすぎを止める仕組み)がありません。 1プラグインあたりの予算も、月額の上限もコア側には用意されていない、と明記されています。もし、ページを表示するたびにAIを呼ぶようなプラグインや、裏で処理を回し続ける不具合を抱えたプラグインがあると、こちらが気づく前に高額な請求が発生しうる、と海外の記事は警告しています。
さらに、登録した鍵はそのサイトの全AIプラグインで共有されます。鍵はデータベース上では暗号化されず(画面表示上は隠されます)、より安全な方法としては設定ファイルへの直接記述が推奨されています。
現時点で唯一しっかり効く安全策は、AIサービス各社の管理画面で、鍵を登録する前に使用上限を設定しておくことでした。
私たちの進め方
この機能は、本番サイトへいきなり入れるのではなく、まず手元の検証環境で、少額の上限を設定したうえで日本語記事に対して試すのが安全だと判断しています。日本語での出力品質や実際の費用感は、自分で触ってみないと分からないためです。実地で確かめた結果は、あらためてこのシリーズでお伝えします。
「鍵を挿せば夢がかなう」ではなく、「何ができて、どこに壁があり、どこにお金がかかるのか」を先に見極める。新しい機能ほど、この順番が効いてくると考えています。
