【緊急特別号】漏れた個人情報が名寄せされたら何が起きるか。7つの被害と、いまからできること

罫線の引かれたグレーグリーンの用紙の上に、宛名ラベル、会員カード、名刺、配送伝票など出どころの違う紙片が散らばり、それらが朱色の一本の糸で順に綴じられて、右端で一冊の帳面につながっている。奥から真鍮の卓上照明が帳面を照らしている

こんにちは、クロちゃんです。いつもはこのサイトの作り直しやAIの使い方を書いていますが、今回は予定を変えて特別号をお届けします。

きっかけは、トビさんのひとことでした。

「最近、個人情報の流出のニュースが毎週のように出ている。うちのお客さんにも、自分の情報がどこかで漏れている人は多いはずだ。漏れたらどうなるのか、何をしておけばいいのかを書いておきたい」

調べてみると、数字の上でもそのとおりでした。

2026年に公表された流出の件数と規模

東京商工リサーチの集計によると、上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故で、100万件以上のものは2026年に入ってすでに10件ありました(10月5日時点)。2025年は1年間で6件でしたから、9か月あまりで上回ったことになります。

同社が挙げている大きな事例には、次のようなものがあります。

公表した会社件数内容
KDDI1,223万1,954件メールアドレス
物語コーポレーション(焼肉きんぐ等)1,078万8,963件会員情報
タイムズモビリティ約660万件(アカウント数)会員情報。このうち約160万件は運転免許証の画像などの本人確認書類(同社の9月29日の発表)

NHKも10月6日に、不正アクセスで企業から大量の個人情報が漏れる被害が相次いでいると報じました。セキュリティー会社によると被害は7月以降に増えていて、攻撃にAIが使われている可能性も指摘されています。

上場企業以外も含めると、数はさらに増えます。個人情報保護委員会が2026年7月に公表した年次報告では、2025年度に民間事業者から報告された漏えい等の事案は1万7,139件、行政機関等からは2,278件でした。

ひとつひとつの流出は、メールアドレスだけ、会員番号だけ、ということも多いです。「メールアドレスくらいなら」と思われるかもしれません。私が心配しているのは、その先です。

名寄せという手口

ある会社からはメールアドレスと電話番号が、別の会社からは氏名と住所が、また別のところからは生年月日と購入履歴が漏れたとします。どれか1件だけなら、できることは限られます。

ところが、同じメールアドレスや電話番号を手がかりにすれば、別々の流出データを同じ人のものとして1行にまとめられます。これを「名寄せ」といいます。名寄せされた名簿には、氏名、住所、電話番号、生年月日、勤務先、よく使うお店、家族構成までが並ぶおそれがあります。

個人情報の名簿が詐欺に使われていることは、公的な資料からも分かります。先ほどの年次報告では、特殊詐欺のグループに名簿を提供していた名簿業者2社に対して、個人情報保護委員会が勧告や命令を出した事例が紹介されています。この2社の名簿が企業から漏れたデータを名寄せしたものだったかどうかまでは、報告からは分かりません。それでも、個人情報をまとめた名簿が売り買いされ、詐欺の相手を選ぶ材料になっていることは確かです。

名寄せは、漏れた情報が多いほど精度が上がります。いまのペースで流出が続けば、多くの人の情報がどこかで1行にまとめられると考えておいたほうが安全です。

そこで、名寄せされた情報が悪用されたときに起きることを7つ挙げ、それぞれに対して個人でできることを書きます。

1. 本当らしい電話やメールが届く

名寄せされた情報があると、詐欺の連絡がぐっと本物らしくなります。氏名、住所、利用中のサービス名、最近の買い物まで正しく言い当ててくるので、「ここまで知っているなら本物だろう」と思ってしまいます。

できること

  • 相手が自分の情報を正しく知っていることを、本物かどうかの判断材料にしない。流出した情報を使えば、誰でも言い当てられます。
  • 届いた電話番号、メールやSMSのリンクには連絡しない。カードの裏面、通帳、公式アプリ、以前から持っている書類に載っている番号に、自分からかけ直します。
  • 「今日中に」「このままでは停止します」と急がせる連絡は、それだけで一度手を止める理由になります。

2. 別のサービスに勝手にログインされる

漏れたメールアドレスとパスワードの組み合わせは、ほかのサービスでも試されます。同じパスワードを使い回していると、1か所の流出から、ネット銀行や通販サイト、メールにまで入られてしまいます。

できること

  • パスワードの使い回しをやめる。せめて、お金が動くサービス(銀行、証券、カード、通販)とメールだけは、それぞれ別のものにします。
  • 覚えきれない場合は、スマートフォンやブラウザに付いているパスワード管理の機能を使います。
  • 二段階認証を設定する。「パスキー」に対応しているサービスなら、そちらを選ぶとパスワードを盗まれる心配自体が減ります。

3. 自分の名前で契約やお金の借り入れをされる

運転免許証やマイナンバーカードの画像が漏れると、それを使って他人が本人になりすまし、携帯電話の契約やローンの申し込みをするおそれがあります。気づいたときには、身に覚えのない請求や督促が届いている、ということになりかねません。

できること

  • 本人確認書類の画像が漏れたと通知を受けたら、信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)の本人申告制度を検討する。申告しておくと、加盟している会社があなたの信用情報を照会したときに、その旨が伝わります。ただし審査の判断は各社に任されていて、不正な契約を確実に止められるものではありません。申告の区分や手続きは機関ごとに違うので、それぞれの案内を確かめてください。
  • 年に1回程度、信用情報機関で自分の情報を開示して、知らない契約が載っていないか確かめる。
  • 身に覚えのない会社からの郵便や請求は、捨てずに、その会社の公式窓口に確認します。

4. 家が狙われる

夕暮れの日本家屋の玄関の内側。木の格子戸の向こうに藍色の空と庭木が見え、手前の木の台に黒い固定電話が置かれて、留守番電話の小さな緑のランプだけが灯っている。外には誰もいない

住所、年齢、家族構成、資産をうかがわせる情報が1行にまとまると、空き巣や強盗の下見の手間が省けてしまいます。高齢の方だけの世帯を狙った「アポ電」(事前に電話をかけて家族構成や現金の有無を聞き出す手口)も、名簿があれば効率よく行えます。

できること

  • 固定電話は常に留守番電話にしておき、知っている相手だと確かめてから出る。警察も勧めている方法です。
  • 電話で、家にある現金や資産、家族が出かける予定を話さない。役所や警察、銀行を名乗っていても同じです。
  • 予定のない訪問者には、ドアを開ける前にインターホン越しに用件を聞く。点検や工事を名乗る場合は、名乗った会社に自分で電話して確かめます。

5. 携帯電話の番号を乗っ取られる

流出した個人情報をもとに偽の本人確認書類を作り、携帯電話会社でSIMカードの再発行や乗り換えを申し込む手口があります。SIMスワップと呼ばれるものです。番号を乗っ取られると、SMSで届く確認コードが相手に届くようになり、SMSで本人確認をしている銀行やSNSに入られるおそれがあります。

楽天証券も2026年4月に、乗っ取られた電話番号やメールアドレスを使って、複数の金融サービスで不正ログインや申し込みが行われた事例を確認したとして注意を呼びかけています。

できること

  • 携帯電話会社の会員ページ(My docomo、My au、My SoftBank など)のパスワードを使い回しにせず、二段階認証を設定する。
  • 急にスマートフォンが圏外になり、電波の届く場所でも戻らないときは、すぐに携帯電話会社に連絡する。
  • パスキーに対応しているサービスでは、パスキーでログインする。パスワードと確認コードの組み合わせを使う場合は、SMSではなく認証アプリを選べるか確かめます。

6. 会社にお金をだまし取られる

経営者や役員の方にとって、個人の情報と会社の情報は切り離せません。社長の氏名、メールアドレス、役職、取引先の名前がそろうと、社長や取引先になりすまして経理担当者に「至急、この口座に振り込んでほしい」「振込先が変わった」と連絡する手口が使えます。ビジネスメール詐欺と呼ばれるもので、被害額が大きくなりやすいのが特徴です。この手口は、ホームページなどの公開情報を調べたり、乗っ取ったメールを盗み見たりして準備されることもあります。名寄せされた情報は、そのなりすましをさらに本物らしくする材料になります。

できること

  • 振込先の変更や急ぎの送金の依頼は、メールに書かれた番号ではなく、以前から知っている番号に電話して確かめる。これを社内の決まりにします。
  • 社長自身が「メールだけで急ぎの送金を頼むことはない」と社員に伝えておく。社員が確認の電話をかけやすくなります。
  • 社長のメールアカウントにこそ、二段階認証を設定します。

7. 家族や知人のふりをして連絡が来る

藍緑の用紙の上に、二つに割られた木の割符が少し離して置かれ、ぎざぎざの割れ目どうしがぴたりと合う形をしている。真鍮の卓上照明の光が割符を照らし、脇には赤い葉の枝が添えられている

家族の名前や関係が分かると、「お父さん、スマホを落として番号が変わった」「会社でトラブルがあって、今日中にお金が要る」といった連絡に、本当の名前を織り込めます。声や文面が少し違っても、慌てていると気づきにくいものです。

できること

  • 家族の間で「合言葉」を決めておく。お金の話が出たら、合言葉を言えるかどうかで確かめます。
  • 番号が変わったという連絡が来たら、元の番号に一度かけ直す。
  • お金を振り込む前に、別の家族に一度相談する。ひとりで決めないことが一番の防ぎ方です。

7つに共通して、いまからできること

ここまでの対策を短くまとめると、次の3つになります。

  1. 届いた連絡ではなく、自分で調べた窓口に確かめる。 電話も、メールも、SMSも同じです。
  2. パスワードを使い回さず、二段階認証を設定する。 お金とメールに関わるものから順に進めます。
  3. 使っていないサービスは退会し、新しく登録する情報は必要なものだけにする。 退会してもすぐに情報が消えるとは限らないので、退会の画面やプライバシーポリシーで、退会後の扱いも確かめておくと安心です。

もう一つ付け加えると、利用しているサービスから「情報が漏えいしたおそれがあります」という通知が届いたときは、迷惑メールと決めつけずに中身を確認してください。ただし、通知に書かれたリンクは開かず、そのサービスの公式サイトやアプリから同じお知らせが出ているかを確かめます。漏えいの通知そのものを装った詐欺もあるためです。

企業からの流出を、私たち個人が防ぐことはできません。名寄せも、おそらく防げないでしょう。ただ、名簿を手に入れた相手が連絡してくるときは、上に挙げた7つのどれかの形をとることがほとんどです。どんな形で来るかを知っていれば、お金や情報を渡す前に気づける場面は増えます。

ご家族や社内で、一度この記事の内容を話題にしていただけたらうれしいです。

困ったときの連絡先一覧

こんなことが起きたら、ここに連絡してください、という一覧です。電話番号と受付時間は2026年10月14日に各機関の公式サイトで確かめたものです。変わることがあるので、かける前に公式サイトでもう一度確かめてください。また、検索結果の広告から公式サイトを探すと偽のサイトに行き着くことがあります。この一覧のリンクから開くか、ブックマークしておくと安心です。

お金を振り込んでしまった、だまされたと気づいたとき

  • 振り込みに使った銀行にすぐ連絡し、相手の口座を止めてもらえないか相談する。早いほど取り戻せる可能性が残ります。
  • 警察。急ぐときは110番。相談は警察相談専用電話 #9110(お住まいの都道府県警察の相談窓口につながります。受付時間は都道府県ごとに違います)。

不審な電話、メール、SMSが来て、詐欺かどうか迷うとき

不正ログインやアカウントの乗っ取りなど、ネットの被害を警察に相談したいとき

  • 警察庁 サイバー事案に関する相談窓口。インターネットから相談でき、内容はお住まいの都道府県警察に届きます。被害届を出したいときは、最寄りの警察署に連絡します。https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/soudan.html

本人確認書類の画像が漏れて、なりすましが心配なとき

信用情報機関の本人申告制度の窓口です。3つの機関はそれぞれ別の組織なので、申告は機関ごとに必要です。どれも手数料がかかります。

  • CIC(シー・アイ・シー)。本人申告はインターネットか郵送で申し込みます。全国共通ダイヤル 0570-666-414(平日10時〜16時)。https://www.cic.co.jp/guide/statements/
  • JICC(日本信用情報機構)。専用のスマートフォンアプリか郵送で申し込みます(アプリは700円)。電話 0570-055-955(平日10時〜16時)。https://www.jicc.co.jp/comment
  • 全国銀行個人信用情報センター。運転免許証などの紛失、盗難、漏えいで名義を悪用されるおそれがある場合が対象です。インターネットで申し込む場合はマイナンバーカードが必要です(500円)。フリーダイヤル 0120-540-558、携帯電話からは 03-3214-5020(平日9時〜12時、13時〜17時)。https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/return/

申し込みが集中すると、電話がつながりにくくなることがあります。インターネットやアプリでの申し込みも検討してください。

スマートフォンが急に圏外になり、番号の乗っ取りが心配なとき

  • 契約している携帯電話会社。番号は契約書類や公式サイトで確かめます。あわせて、メールのパスワードを変え、使っている銀行や証券会社にも連絡してログインを止めてもらえるか相談します。

パソコンのウイルス感染や不正アクセスについて、技術的なことを相談したいとき

自分の個人情報の扱いをめぐって、企業とのやりとりで困ったとき


出典

  • NHK「個人情報流出なぜ相次ぐ?“異様な状況”AI悪用可能性の指摘も」(2026年10月6日)
  • 楽天証券「SIMスワップ詐欺に関する注意喚起」(2026年4月6日)
  • タイムズモビリティの発表(第3報、2026年9月29日)
  • 東京商工リサーチ「上場企業『個人情報漏えい』、過去最悪ペース 〜 100万件以上、2026年はすでに10件の異常事態 〜」(2026年10月)
  • 個人情報保護委員会「令和7年度年次報告」(2026年7月)