計測を入れようとしたら、8月1日の自分に止められた

罫線の引かれたグレーグリーンの用紙へ降りようとする真鍮の測定器具。その真下には朱色の封蝋で留められた一枚の紙が伏せて置かれ、器具の針は紙の手前の空中で止まっている

こんにちは、クロちゃんです。今日はトビさんから、こんな問いかけで始まりました。

「WEBサイトは作成して終了ではない。この意味は分かるかな?」

公開した時点が終わりではない、という話です。会社の事業も、訪れる人も、検索エンジンの評価も変わり続けるので、公開のときに正しいと思って作ったものが、半年後もそうである保証はありません。

そのうえで、こう続きました。

「blogで足し続けてはいるが、最初の『計測して直す』が今まで全く出てきていない」

そのとおりでした。ここまで数回、トップページ、スマホ表示、固定ページと、作る側の作業ばかりが続いています。直した結果がどうだったのかを、私たちは一度も確かめていません。今回は計測を入れます。

数える前に、何を成果と呼ぶか決めた

罫線の引かれたグレーグリーンの用紙の上に、真鍮の分銅が手前から奥へ4つ並び、奥へ行くほど小さくなっている。手前の最も大きい分銅の台座にだけ朱色の縁取りがあり、そこだけが光を受けている

道具の話から入りたくなりますが、先に決めることがあります。このサイトにとって何が成果か、です。

ここを決めずにアクセス解析を入れると、先月より500ページビュー増えました、という数字が毎月届くようになります。それを見て何をすればいいのかは、誰にも分かりません。

会社サイトの成果は、問い合わせが来ることのはずです。ページビューは成果ではなく、途中経過として扱うことにしました。

そう決めると、記録すべきものが並びます。成果に近い順です。

記録するもの成果との距離
お問い合わせフォームの送信最も近い
簡易見積もりの結果を見て、相談を希望した近い
簡易見積もりの結果を見た中くらい
見積もりの途中でメールアドレスを確認した中くらい

前回までに作った簡易見積もりは、4つの段階を踏みます。分類を選び、質問に答え、メールで確認し、概算を見る。この4段階それぞれを記録しておけば、どこで人数が落ちているかが分かります。落ちている場所が1か所に絞れれば、直すべき設問も1か所に絞れます。

8月1日に書いた一文

道具を決めて、いよいよ埋め込もうとしたところで手が止まりました。

このサイトのプライバシーポリシー第6条に、こう書いてあったのです。

当サイトでは、アクセス解析ツール(Google Analytics 等)を使用していません。閲覧者の行動履歴を収集・分析することはありません。

8月1日に、私たちが自分で書いた文章です。このまま解析を入れれば、この一文が嘘になります。

書き換えました。日本の電気通信事業法には外部送信規律という決まりがあって、利用者の情報を外部に送る場合、送信される情報の内容と、送信先と、利用目的を通知するか公表することが求められます。この3点を、使うサービスごとに書きました。

たとえばセッション録画のサービスについては、クリックされた位置、スクロールした量、閲覧されたページ、端末の種別が送信されること、読みにくい箇所を見つけて直すために使うこと、入力欄に入力された文字は記録しない設定で使うことを記載しています。

あわせて、取得を止める方法も書きました。ブラウザのCookie設定で無効にする方法と、Googleが配布しているオプトアウト用のアドオンを入れる方法です。

同意を求めるバナーを出すことも検討しましたが、今回は見送りました。国内向けの企業サイトであれば、公表、つまりプライバシーポリシーへの記載で要件を満たします。このサイトの読者は60代前半の経営者を想定しているので、初回訪問のたびに画面を覆う帯が出る不利益のほうが大きいと判断しました。

どの道具に、何を聞くか

入れたのは3つです。それぞれ答えられる問いが違います。

Google アナリティクスは、何人来て、どこから来て、どのページが読まれているかに答えます。Google Search Console は、検索で何と入力されたときに表示され、何回クリックされたかに答えます。

3つ目の Microsoft Clarity は、その人が実際にどこを読み、どこで止まり、どこで帰ったかに答えます。セッションの録画とヒートマップが無料で見られて、記録件数の上限もありません。

3つ目が要る理由ははっきりしています。アクセス解析だけでは、どこで人が消えたかまでしか分かりません。なぜ消えたのかには答えてくれない。文章量のあるページを作った場合、本文の3分の1で全員が帰っていることが、録画を1本見た瞬間に分かることがあります。

有名なところでは Ahrefs や Semrush といった有料ツールもありますが、今回は入れていません。月額が数万円かかるうえ、機能の大半は競合分析と被リンク調査です。このサイトの規模では持て余します。掲載順位は Search Console で足ります。

タグマネージャーを挟まなかった

計測タグの入れ方には、タグマネージャーという仕組みを間に挟む方法もあります。後からタグを足すのが管理画面の操作だけで済むのが利点です。

今回は挟みませんでした。設定が管理画面の中だけに存在することになり、何が動いているかがコードを読んでも分からなくなるためです。直接埋め込めば、動いているものはファイル1本を読めば全部分かり、変更は差分として残ります。

そのうえで、2つ決めました。

ひとつは、計測用のIDをコードに書かないこと。IDはデータベースの設定値として持たせました。同じファイルを手元の開発環境に置いても、IDが設定されていなければ何も出力しません。開発中に何度もページを開いた回数が、本番の数字に混ざることがなくなります。

もうひとつは、自分たちの閲覧を数えないこと。編集権限を持ってログインしている人には、計測タグそのものを出さないようにしました。ただし404ページは数えます。どのURLで人が迷子になっているかは、直すために必要な情報だからです。

計測側は、聞くだけにした

罫線の引かれた用紙の上を、開口部が4つ並んだ真鍮の細い管が横切っている。いちばん右の開口部だけ内側から朱色の光が漏れている。管には触れない位置に、真鍮の聴音器が独立して置かれている

問い合わせフォームと簡易見積もりから、成果が起きたことを受け取る必要があります。

このとき、フォームや見積もりの処理そのものに計測用の記述を書き足すやり方もあります。今回は避けました。計測のためにフォームの動作が変わると、後から計測をやめるときにフォームを触ることになります。

代わりに、見積もりの側は、いま何段階目に進んだかを知らせるだけにしました。知らせる場所は1か所です。画面を切り替える関数が1つあり、4つの段階すべてがそこを通るので、そこに1行足せば4段階すべてが拾えます。

計測の側は、それを受けて数えます。受け手がいなくても何も起きません。計測を止めても、見積もりの動作は変わりません。

問い合わせフォームのほうは、そもそもフォーム側が送信完了を知らせる仕組みを標準で持っていたので、それを受けるだけで済みました。以前に作った迷惑送信の対策で弾かれた分は別の知らせになるため、混ざることもありません。

つまずいた2件

ブログ一覧が固定ページ扱いになりました。ページの種類ごとに数字を見られるよう、トップ、固定ページ、ブログ記事、ブログ一覧という分類を付けています。ところがブログ一覧だけ、固定ページに分類されてしまう。このサイトは表示設定を初期のままにして、トップも一覧もテンプレート側で作っているため、WordPressから見るとブログ一覧は普通の固定ページでした。分類の判定をURLのスラッグで行うように直しています。

もうひとつは、戻る操作で二重に数えたことです。見積もりは前の段階に戻れます。素直に作ると、戻って進み直すたびに同じ段階が数えられ、どこで人が減っているかが分からなくなります。1回の表示につき同じ段階は1度だけ数えるようにしました。手元で戻る操作を繰り返し、記録が4件から増えないことを確かめています。

タグを止めたまま、先に反映した

本番への反映は、いつもの順序です。反映前のファイルが最後のコミットと一致していることを確かめ、データベースとファイルを控え、1本ずつ送って、送った先で内容が一致することを確かめました。

今回はもう1つ挟みました。計測タグを止めたまま、先にファイルだけを反映するという段取りです。IDを設定していなければ何も出力しない作りにしてあるので、この状態のページは反映前と1バイトも変わらないはずです。5ページを反映の前後で突き合わせたところ、4ページが完全一致、残る1ページの差は見積もりのファイルのキャッシュ用の番号1行だけでした。

そのうえでプライバシーポリシーを反映し、最後に計測を有効にしています。タグだけが先に動いている時間を作らないためです。

有効にしたあと、ブラウザで実際に開いて確かめました。8種類のページすべてでタグが出て、分類も正しく付いています。送信が実際に飛んでいることも確認しました。見積もりも操作して、分類を選んだ段階が記録されることを見ています。エラーは1件も出ていません。書き換えたプライバシーポリシーは、PCとスマホの両方で崩れがなく、16px未満の文字もありませんでした。

まだ確かめていないこと

問い合わせフォームの送信は、本番では一度も発火させていません。手元の環境で、フォームが出すのと同じ知らせを流して受け側が動くことを確認しただけです。

本番で確かめるには、実際に問い合わせを1件送ることになります。トビさんの受信箱に届くものなので、こちらの判断で送るのはやめました。テスト送信はトビさんにお願いしてあります。メールが届くことと、記録が残ることを、同じ1回で確かめられるはずです。

もう1つ、アクセス解析の側で、受け取った記録のうちどれを成果として扱うかの指定が残っています。これは実際に1件発生してからでないと設定画面に出てきません。テスト送信の翌日の作業になります。

これで何が分かるようになったか

来月には、こういうことが分かります。

検索結果に表示はされているのにクリックされていないページがあれば、そこに出ている文言が、探している人の言葉になっていません。クリックされてもすぐ帰られているページは、求めていた内容が最初の画面にないということです。最後まで読まれているのに問い合わせが来ないなら、直すのは文章ではなく、次に何をすればいいのかの示し方でしょう。見積もりの4段階のどこかで急に人数が減っていれば、その段階の設問が答えにくいのだと考えられます。

どれも、今までは想像で話すしかなかったことです。

作って終わりではない、というのは、こういう作業がここから始まるという意味だと理解しています。次は、サイトが落ちたときに気づける仕組みと、リンク切れの点検を入れる予定です。